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8月27日 桐がっ子たち海に遊ぶ ~三浦海岸共同生活~

夏の恒例行事になってきた筑波附属11校の生徒による共同生活が、25日からの3日間、神奈川県の三浦市で行われた。これまでは、黒姫高原での山の生活だったが、今年からは三浦での海の生活となった。 桐が丘からは小学部4年生から高等部1年生まで6人が参加した。総勢100名、引率の教職員30名の大世帯での生活だ。小学生、中学生、高校生がおり、様々な障害のある子供たちも参加する。そこでは、一緒に生活することを、楽しむことを創造する。力を合わせることの喜び、やりがい、同時にいろいろな人が一緒に生活することの大変さも学ぶのだ。 これまでとの違いは何といっても海の活動だろう。


その中でもメインは、シーカヤック。桐が丘の子供たちは、教員と一緒に二人乗りのカヤックにのった。前に乗り、海に漕ぎ出すと、オールで水を掻く。カヤックで海の上を進む浮遊感は格別だう。100mほど沖まで行き、沖でいろいろ動いた後に帰ってくる。帰ってきたときの子供たちの表情に、満足感と達成感が感られた。ある生徒は「ゆりかごにのっているみたいだっった」と言っていた。ゆりかごに入っていたころの記憶があるのだろうか。


ある生徒は、野外炊事のとき、薪の火からの煙が目にしみた。それでも、カマドから離れず、ウチワで風を送ることをやめなかった。(写真3)
スイカ割りで、スイカを目がけて振り下ろした棒はスイカをはずしたものの、仲間と食べたスイカの甘さに、思わず顔を見合わせていた。 他校の子供たちともたくさん交流したようだ。初めのうちは、緊張した表情がご飯の回数を重ねるにつれ緩んでいくのが分かった。

7月10日 自分への投資 〜T事務員奮戦記〜

「エー、T君その封筒買ったの?」と副校長が素っ頓狂な声をあげた。「はい、買いました。」とT君は答えた。「いくらしたの?」と副校長。「100円です。」とT君。会話の内容に私の野次馬根性が働き、近づいてみた。
T君の前には10枚程の真新しい封筒が封をされた状態で積まれている。そして、スティックのりがある。彼は、新しい封筒を100均ショップで買って、封を糊付けする練習をしていたのだ。それを見て私は言った。「T君は自分の能力を向上させるために、自分に投資したんだね。」
T君は、本校の卒業生だ。今週、大学を卒業し、本校の事務を手伝ってもらっている職員だ。彼には、文書の収受や発送処理をしてもらっている。郵送によるものもあるので、封を開ける、封をするは彼の仕事の一つだ。
事務員となって数日、私はT君に聞いた。「T君、郵便物を開けるのはどうしているの?」T君は、大きな声で答えてくれた。「僕は、うまくできないので、ほかの事務の方にやってもらいます。」と。私は、「レターオープナーという機械があるのを知っている?」と聞いた。「知りません」と、元気な彼の答え。
その後、数日経って、キュイーン、キュイーンと小気味いい音がしばしば聞こえるようになった。早速、副校長がレターオープナーを用意してくれた。彼は、自分で封を開けるという自由を手に入れた。
何日か前、彼に封の糊付けができるか聞いてみたら、やったことがないという。スティックのりなら使えるだろうと思い、やってもらったらできそうだ。練習していこうと話した。そして、数日。彼は、給料の中から、自分の能力を高めるために投資した。T君の向上しようとする姿勢を応援したい。
素っ頓狂な声を上げた副校長は、使い古しの封筒で練習用のものを作ってあげた。未使用の封筒を練習に使うのは、確かにもったいない。

7月8日 60年の役目を終えて 〜旧校舎の解体〜

休み時間、廊下がやけに騒がしい。廊下に出てみると、小学部の2年生が窓にへばり付いて外を見ている。
子供たちの視線の先では2台のショベルカーが、コンクールの瓦礫を運んでいる。旧校舎の解体が本格的に始まった。ショベルカーの先では、4月まで2年生が学んだ教室の外壁が取り払われ、がらんとした室内が見える。

2年生はその光景を新校舎から見ている。新旧の交代を。それを見ている2年生と私の関係も新旧である。こちらもいずれ交代する。

7月5日 スロープかエレベーターか

リーダーが「正門までエレベータで行きたいひと?」と聞く。一人も手を挙げない。「スロープで行く人?」と聞くと、6人の手が一斉に挙がった。
高等部宿泊学習3日目、オリンピック記念青少年総合センターでの朝食を終え、3日目のメイン活動、都庁探訪へと出発する。朝食会場から正門までの移動方法を3班のリーダーが聞いたときの状況である。
3日目にしてすっきり晴れた。気持ちのよい朝の移動ということもあろうが、2日目までエレベーターの前で待つことことが多かった。自分たちで移動できるならそうしたいという思いが挙手の勢いから読み取れた。6台が颯爽とオリセンのスロープを下る。「かっこいい」と感じ、シャッターを切った。

7月4日 もう、これだけで満足です ~高等部宿泊学習同行記3~

「このハンバーガー超うまいです。僕はもうこれだけで今日は満足です。この後の見学ができなくても、もう十分です。」とY君は、私の目の前で言った。
これからメインの見学があると言うのに、そう彼に言わせたハンバーガーとはどんな味か。私も同じものを食べた。
確かにうまい。牛肉の味がしっかりし食べごたえもある。Y君の隣のA君は、Y君より先に食べて、「うまい」を連発。1個食べ終えて、もう1個頼むんだと悔しがった。
2年生7名の顔がほころんでいる。おいしいものは人を笑顔にする。生徒ばかりではない。付添の方も、教員も満足気である。ふだんハンバーガーなど好んで食べない私でも、これはもう1個いきたいと思ったほどである。
高等部宿泊学習の2日目は、オリセンを出発し、六本木、乃木坂界隈を探訪する。行き先は、クラスごとに決める。
2年生は、六本木についたら、Mさん推薦のハンバーガーを食べ、その後は六本木を象徴するビルの展望台に昇り、美術館にも入る予定だった。最後には、テレビ局のショップで買い物することにしていた。宿泊先であるオリンピック記念青少年総合センターを出て、約3時間で回る予定である。
今日は、あいにくの雨で、カッパを着ての出発となった。そして、車いす7人の移動は、予想以上の時間を要した。特に、エレベーターでの移動に時間がかかったように感じた(この点は、生徒の印象は私と違う。それは別の記事としよう)。そうしたこともあり、予定を大幅に過ぎてハンバーガーショップに到着した。そこでは大満足で、冒頭のような発言を聞いた訳である。
Y君の発言は現実のものとなった。みんなが食べ終わったところで、D君から提案があった。もう残された時間が少ないので、展望台と美術館を取りやめ、テレビ局のショップだけに行ってはどうかというものだった。やむを得ないということで、そうすることになった。Y君の、後の予定はなくなってもよいくらいの「満足」は現実のものとなり、予定は実現されないこととなってしまったのである。

7月4日 ツメツメ ~高等部宿泊学習同行記4~

2日目、六本木を探訪した2年生の反省では、「ツメツメだった」「ツメツメになった原因は何か」「ツメツメを改善するにはどうしたらよいか」と「ツメツメ」がキーワードとなった。「ツメツメ」という言葉をあまりみみにしない私には新鮮だった。
生徒たちは、この日ハンバーガを食べ、六本木を象徴するビルの展望台に昇り、美術館に入り、テレビ局のショップで買い物をする予定にしていた。だが、雨の影響もあって、展望台と美術館という(私から見ればメインの)予定をキャンセルせざるを得なかった。そうした状況を振り返り、日程が「ツメツメ」だったという反省になったようだ。
行きたいところを「詰め込み」過ぎた、という点では皆が一致したようだ。だが、その原因分析になると、行きたいところが盛りだくさんだったというほかに、時間の使い方にロスがあったのでないか、一人一人がもっと時間に間に合うという意識をもつべきではないかと、いろいろ出てきた。
同行した私としては、振り返りで反省すべき点が出ることは止むを得ないが、彼らの実感としては後の予定をキャンセルするほど満足したハンバーガーであったはずだ。「ツメツメ」の予定を途中で破棄してでも、今ーそのときの充実感を選択した判断こそ、もっと評価していい。「振り返り」というと、私達は、とかく反省することや改善することを意識しやすい。良かったことを確認し、さらなる高みを目指すことを大事にしたいものだ。

7月3日 しゃべり場 ~高等部宿泊学習同行記2~

耳を疑った。昼食後の午後の活動は、レクリエーションのはずだ。だが、この時間進行のK教諭は、これからグループワーク「しゃべり場」を行うという。「外出」をテーマに言いたいことを付箋に書き、討論し、班ごとに発表しあうのだという。
意外や、生徒からは、討論がどうしてレクリエーションになるのだという声はない。そんな素直な生徒たちだったろうか。討論が始まって合点がいく。生徒たちはどんどん話す。話したくてしようがないようだ。
こんな光景だ。そう。10数年前、あるテレビ局の番組で、10代の若者たちが真剣に議論しあう番組があった。そのタイトルが「しゃべり場」だった。口角泡を飛ばして議論する光景を思い出す。既視感がある。
あるグループは、外出の困りごとを「高い」「遠い」「狭い」のように整理した。
H君は自分の経験を交えて説明した。自分は手の動く範囲が狭いので、エレベーターのボタンを押すとき棒を使っている。その棒を忘れて外出すると、誰かに頼まなくてはエレベーターを利用できない。棒を忘れたとき、とても悲しくなりますと。だがその言い方が面白く笑いを誘った。H君は、困った体験をユーモアを交えて話す。不思議なもので笑いながら聞いているが、その状況をリアルに感じる。「狭い」のは、通路。広いと自慢の通路も、立派な電動車いすにとっては狭いのだ。
別なグループは、精神面、環境面、対物面、対人面から整理した。精神面では、他人の視線を感じるといったことや席をゆずってもらうときに感じる意識などが話し合われた。
もう一つの班では、◯◯で困ると整理した。バリアフリーでなくて困る、自然環境が要因で困る、トイレで困るなど。自然環境で困るは、雨、風など。雨が降れば皆困るのだが、Tさんは少し違う。長いカッパは雨に当たらなくてよいが、電動車いすに巻き込まれて困るのだそうだ。
「しゃべり場」だと思えるのは、一人が言うと、「そうそう」と相づちを打って似たような経験や関連した経験が次々と出てくるところだ。毎日、東京の通勤ラッシュを経験している子供たちは、いろいろな意味で鍛えられている。
彼らは、「しゃべる」ほどの経験をしており、心を動かされた経験がある。だから、しゃべりたいのだ。生徒たちが楽しんで取り組んでとすれば、これも余暇と言えるかもしれない。そこまで考えて、「しゃべり場」をレクリエーションとしたとすれば、K教諭の読みは鋭いと言えるだろう。

7月3日 高等部宿泊学習同行記1 ~やけに大人が多い開会式~

通称オリセン、オリンピック記念青少年総合センターのセンター棟前に、16名の高等部1,2年生が整列した。
3つの班ごと2列に並んだ生徒たちを、彼らの1.5倍位の大人が囲んでいる。生徒たちは、一人を除き車いすを使っているので、立っている大人がやけに多く見える。
開会式進行役のK君が進行する。「付添の方の紹介から始めます。付添の皆さん出てきてください。」とアナウンス。10数人の方が前に出て、御自分のお名前とパートナーになる生徒の名前を紹介する。生徒たちは、この宿泊学習に参加するために、まずは付添の方を探し、自分のことを説明し、介助を依頼することからスタートさせる。生徒たちは、付添の方の大切さを知っている。だから何よりも前に、付添者の紹介をするのだ、と初参加の私は了解する。付添のMさんと昼食のときに話した。もう10年も桐が丘の宿泊学習に付添ボランティアとして参加してくれているそうだ。最初に参加したとき、遠くから女生徒が手招きした。一緒にトランプしようと誘ってくれたのだという。その自然さがたまらなく好きで、毎年参加しているのだという。嬉しい話だ。
開会式に戻ろう。次は、看護師さんの紹介。やはりなくてはならない人だ。ちょっとユーモラスに御自分を紹介し、笑うところですよと付け加えた。生徒は親近感を覚えたに違いない。私もそうだ。
3番目に校長の話。生徒たちの順序づけは明白だ。生徒たちは、「自立活動」という学習の中で、自己分析し目標をもって参加している。しおりに溢れている言葉、「自己理解」「自己管理」「社会性」「協調性」。私は、自分の掲げた目標を大切にしつつ、楽しい、思い出に残る3日間にしよう、と話した。また、九州では大雨で、既に災害が発生しているとの報がある。そのことを思いつつ、今、私達はここで、自分たちがなすべきことに、しっかり取り組んでいこう、そう続けた。
さあ、どんな3日間となるのだろう。わくわくする。

6月27日 バトンが大事な紅白リレー

今日は、施設併設キャンパスの運動会に当たるスポーツデーの本番だ。開会式を進行する生徒の様子にも緊張感がうかがえる。
スポーツデーでは、選りすぐりの2種目を行う。玉入れとリレーだ。中学部と高等部の、さまざまな発達段階の生徒が一緒に競技をするのだから、そこには様々な工夫が必要である。先週は、玉入れの様子を紹介した。今回は紅白リレーを紹介しよう。
最初の二人は、バトンを車いすのブレーキレバーに差した。上向きのバーが、バトンの筒を入れるのにちょうどいいようだ。紅組で中2のAさんは、両手で勢いよく車いすをこいだ。白組で中2のBくんは、片方ずつこぐ。右を2回、左を2回、右を2回という感じだ。B君は左半身にまひがあるため、右半身だけでこぐのだ。Aさんと差はつくが、着実に前進するBくんのこぎは力強い。
紅組の2番手Cさんは、自分ではこぐことはできない。Cさんが紅いバトンをしっかり握ると、先生が前からバトンに取り付けた紐を引いた。車いすはスルスルと進む。紅いバトンの筒に通された紅いリボン、こんな使い方をするためだったのだ。遅れてバトンタッチをしたDさんも同じ方式だ。だが、Dさんの違いは両手で握っているところ。しっかり握っているのでスピードが出る。CさんとDさん、動いているときは風を感じているのか顔が上がって気持ちよさそう。何組かが、このバトンを握って先生が引っ張る方式でリレーする。リレーにおいてバトンは大事だが、ここまでバトンが大事な役割を果たすリレーはないだろう。
高等部のGさんは、バトンを握った。すると先生が、そこから数cm離れたところを握って進んだ。硬いバトンを一緒に持って進んでいる。誰も押してはいないが、抵抗の少ない室内の床では、ほんの小さな力で車いすは進むのだ。
こうして5、6組がバトンをつなぎ、まず白組のアンカーにバトンが渡った。白組のアンカーは勝利を確信したように車いすを確実に進めた。白組が半周ほどもリードしたところで、紅組がアンカーにバトンがわたった。紅組アンカーは血相を変えて飛び出した。速い速い!ものすごいスピード。でも、差がつきすぎているのでは。だが、ゴールのテープを一瞬速く切ったのは、紅組のアンカーであった。


閉会式。一人一人の活躍ぶりが思い出しながら、全員にメダルを掛けた。笑顔を浮かべる生徒、そっけなく受け取りながらも嬉しそうにしている生徒。それぞれに満足感を味わっていることだろう。

6月20日 僕は算数が好き ~短期入院中子供たち~

併設している施設(整肢療護園)には、手術や訓練のため2か月から3か月入院する
子供たちがいる。

手術が終わった翌週には、ギブスを巻いて登校してくる。
学習が始まる。
小学部5組では2人の男の子が学習している。4年生と2年生の複式学級である。
のぞくと別々の課題をやっていることが多いが、今日は一緒に英語のDVDを視聴して
いた。曜日を英語で表現しているものだった。
4年生の外国語活動の教材だろうが、2年生も興味津津で見ていた。

そう言えば、最近まで、ここには小学部6年生の女の子もいた。
3学年一緒の授業は大変だろうが、子どもたちは結構楽しんでいるのではなかろうか。
上の学年でやっていることを背伸びして見たり、下の学年でやっていることを
懐かしがっていたりするのではなかろうか。

小学部4組に行くと、K君がお茶を飲むところだった。
今日は一人だという。
入っていくと、担任の先生が
「今、算数の勉強でしたが、K君は算数が得意なんですよ。」と教えてくれた。

私「K君そうなんだ。
どんな勉強をしたか教えて」と言うと、
K君は、ドリルを開き始めた。
今日、やったところを通りすぎて、ドリルの真ん中ぐらいを開く。
そこには、囲いの中に6とうの牛がいて、4とう加わると何とうになるか、
という問題がイラスト入りで載っていた。
K君はその問題が好きで、ドリルを開くときはいつもそこからなのだ、とK先生が説明してくれた。

私「K君、この問題が好きなんだ。」
K君は、大きくくりくりした目で私を見て、大きな声で
「うん」と応えた。

得意は「好き」から始まる。

K君も間もなく退院する。
退院しても算数がずっと好きでいてほしい。