「校長日記」カテゴリーアーカイブ

12月12日 ヒーローになる時期は一人一人違う ~穴澤雄介さんのメッセージ~

今日の音楽鑑賞会、ヴァイオリンの演奏が素敵だったのはもちろんだが、演奏された穴澤雄介さんのメッセージがまた素敵だった。

心臓疾患から視覚障害になられた穴澤さんは、高校時代には視力を失う。そんな中で、音楽の道に進むことを決意しヴァイオリンを猛練習した。だが、ヴァイオリニストを目指すには遅いスタートで、演奏家で食べていく難しいことを悟られる。しかし、穴澤さんはそのマイナスをプラスに変えた。演奏だけではやれないなら、自分にしかできない演奏をすればいいと思い立ち、「作曲+演奏」の道に進んだのだ。今では、年1枚のペースでアルバムを発表、17枚にもなるというから驚きだ。

穴澤さんは心臓の手術を何度も受けている。当然、運動は制限された。50Mも走れなかったそうである。成人になって、3回目の手術を終えてから、ようやく健康面でも心配もなくなったそうだ。そこで、穴澤さんは、子供の頃にやりたくてもできなかった「走る」ことに挑戦を始める。だが、外は走れない。室内で練習できるようルームランナーを買って、1分、2分と走る距離を少しずつ伸ばした。2年間、そうした練習を続け、昨年、穴澤さんはフルマラソンを完走することができた。6時間制限のところを「5時間58分」でのゴールだったそうだ。穴澤さんは言う。「誰にでもヒーローになるときがある。その時期が一人一人違うだけだ。」

穴澤少年にとって、フルマラソンを走る人はヒーローに映ったことだろう。そのヒーローと同じことを、何十年かかけて達成したのだ。それは、まさに自分史に残るヒーローに違いない。

私達は、自分の人生を生きている。人の人生は生きられない。ヒーローは自分の人生にこそ必要なのだ、そう思った。

12月12日 ヴァイオリンは歌う ~音楽鑑賞会~

 ヴァイオリンが奏でるジブリメドレーを、子供たちは思い思いに楽しんでいる。司会の音楽会開始宣言とともにいきなり始まったヴァイオリンの演奏、聞き覚えのあるメロディー、楽しく心弾むリズム、どこか懐かしく甘い感じする低音、頭の奥にまで届きそうな高音、しだいに穴澤ワールドに惹き込まれていく。

 穴澤さんは、ヴァイオリンという楽器は、人の声に最も近いと話してくれた。そして、ヨーロッパツアーでも、一番歓迎された曲として「うちのワンコ」というオリジナル曲を弾いてくれた。お話があったからかもしれないが、まとわりつく子犬のイメージが浮かんでくる。演奏会の後で子供たちに聞くと、この曲が印象に残ったという感想が多かった。私には、ヴァイオリンが楽しげに歌っているように感じられた。

 穴澤さんは、ライブをたくさんする。生の音楽交流だ。演奏者と会場が一体となって音楽は創られると教えてくれた。たくさんの車いすに囲まれた穴澤さん、真剣に見つめる子供たちの息遣いも感じとられたことと思う。

 子供たちとともに、しばしヴァイオリンの音色に酔いしれたひととき、学校はいいなと改めて思った。

12月9日 高等部生徒ボッチャ交流で活躍

 昨日の日曜日、筑波大学附属の11校の児童生徒、保護者、教員200名が集まり、「共生社会を目指すスポーツ交流とシンポジウムの集い」が行われた。  午後のスポーツ交流は、毎年、ボッチャを行っている。昨年までは、桐が丘の教員が指導役だったが、今年は、ルール説明と審判などで3名の高等部生徒が活躍した。

 全体が2グループに別れ、100人ほどが一つのボッチャコートに集まった。高等部2年のM君がマイクを握り説明を始める。同じく2年のH君と1年のK君がデモンストレーションする。M君の説明に合わせ、H君が白いボールを転がす。ボッチャの場合、この白ボールが基準だ。続いてH君が赤いボールを転がす。白ボールとの間30cm。続いてK君が青ボールを転がす。すると、青ボールは白ボールと赤ボールの間で止まる。「うまい!」参加者から拍手が起こった。

 狙ってできることではない。息のあったトリオだ。

 説明を聞いた後は、6コート12グループに分かれてゲームをしながらの体験。説明をした高等部生徒は、1人ずつ別れ、審判としてゲームを仕切る。K君は、裏表が青と赤になった道具を持ち、攻撃チームを指示する。各チーム6個ずつのボールを投げ終わる。K君が、白いボールのところに行き、参加者も全員集まる。K君が結果を説明する。「白いボールに一番近いのは赤ボール、だから赤の勝ち、そして白ボールに一番近い青ボールの間に2個赤ボールがあるので、赤2点です。」K君の顔はちょっと紅潮しているが、笑っている。緊張感の中に、嬉しさが感じられた。

 小学生も高校生も、保護者も教員も、みんなボッチャに熱くなった。目の不自由な人も参加した。そのときは、ほかの人がジャックボールのそばに急行し、手をたたいて方向を知らせる。転がした後はそばにいる人が「いい方向です。白いボールの右50cmに止まりました。ナイスです」と実況中継。電動車椅子のK君は、素早くコート内を動き回ってゲームをコントロールする。

 支え合い、楽しみ、熱くなった、午後のひとときだった。

12月2日 1年生の成長ぶり

月曜日の1時間目の国語の時間、小学部1年生は、週末の出来事を話す。

話したことは、先生が黒板に書き留めてくれる。そんな授業を春から続けている。

春、4人は、週末の出来事を思い出しながら、言葉をさがし、言いよどむこともしばしばあった。話し終わったあとは、友達からの質問がある。友達から質問が出ずに先生が質問をすることもあった。

昨日、久しぶりに覗いてみた。まず、黒板の文字が小さくなった(写真)。タイトルを最初に言うスタイルは変わっていなかったが、その次に先生は「いくつに分ける?」と質問する。Aさんは「三つのことを話す」という。大きなまとまりと小さなまとまりがあるということだ。そして、話すことを見通さなくてはできない。大丈夫だろうかと見守った。

Aさんのタイトルは「おでかけしたはなし」である。そして、「パソコンでしんけいすいじゃくをしたはなし」「ドーナッツをたべにいったはなし」「げーむをしたはなし」だという。

最初の話をする。先生が黒板に書く。先生は相当のスピードで書くが、Aさんの待ちきれない様子が後ろからよく分かる。両手を動かして、先生早く書いてと言っているようだ。

ドーナッツの話は、ドーナツ屋さんに行って、ドーナッツを選び、それがおいしかったこと。いつものドーナッツは大きくて食べられないが、この日のドーナッツは普通の大きさだった。時系列の中に、素朴な感情や気付きが見える。

春に比べると、格段にお話が詳しくなり、そしていろいろな言葉が使えるようになった。私と一緒にこの学校に来た子どもたち。これからも成長を見守っていきたい。

11月2日 桐が丘祭③

桐が丘祭では、ステージ発表やクラス企画のほか、日頃の学習の様子もたくさん展示されている。美術や図画工作、家庭科などの作品、国語の時間に作った物語、理科の観察日記、調べ学習の結果など様々である。

玄関を入ると、中学部や高等部の美術作品が目に入る。粘土で作った人の動き、自分用として作られた陶器等々力作が並ぶ。美術や図画工作の作品には、作品作りに当たってどんなイメージをもたせのか説明が添えられている。イメージを膨らまし、それを表現させる。担当した教師の教科観が感じられて楽しい。

美術に限らず、桐が丘の教師たちは、何のためにその教科を学ばせるのか、それを問いながら指導に当たっている。そうしたことを展示の中に探していく。

さて、高等部は、1~3年生を縦割りにして各パートごとに企画・運営している。文芸、ICT,演劇の3パートである。

演劇パートは、ステージで発表した。日本語劇は「鉄道員(ぽっぽや)」、コント、英語劇は「ロミオとジュリエット」だった。いずれも長いセリフが続くのであるが、10人足らずのメンバーが一人何役もこなしていた。 「鉄道員(ぽっぽや)」 は時代背景や心情理解が難しそうであったが、理解して表現しようとする様子が見てとれた。コントは会場を沸かせた。

文芸パートには、午後一番に行ったが、100円で頒布の文集は売り切れで、店じまいの最中だった。午前中、高3のK君に、「校長先生文芸パートに買いに来てください」と言われていた。すぐに行かなかったことを悔やんだ。一方、生徒の市場調査も甘い、とも思った。

ICTパートでは、自分たちのICT活用の発表、タブレットパソコンで推奨するアプリの紹介を行っていた。メンバーのリードに沿って、いくつかアプリを試してみた。一筆書きアプリにはまってしまった。

高等部は、自分たちの追求したものを、他者にしっかり伝えることを意図したようだ。生き方を追求する、高等部らしい企画だった。

卒業生の姿が目立った。卒業生控室にも7~8人いた。入室したときには、怪訝そうな表情で迎えられたが、新米校長です、と挨拶すると表情が和らいだ。卒業生にとっても大事な桐が丘祭が、50回を数えた。これからの50年に向かってのスタートが始まった。

11月2日 桐が丘祭②

例年2日間に渡って行われる桐が丘祭であるが、校舎建築中ということもあり1日での開催となった。午後からは、中学部や高等部の展示を見て回った。

来校者が結構多いなと思いながら歩いていると、私を呼ぶ声がした。振り向くと同じ筑波附属の高校の女子生徒が二人いた。筑波附属には11の学校があり、その11校で毎年夏に共同生活を行う。それに参加した生徒たちは、文化祭などを通して日常的な交流を続けている。二人は、黒姫高原で桐が丘の生徒と交流していた。ほかにも附属駒場の生徒も来てくれたようだ。交流の当事者であった本校の生徒も嬉しそうにしていたが、教員たちも共同生活の良さを実感したようだ。

さて、中学部は、そうした来校者たちに楽しんでもらえるものを企画した。どういう人がくるか、何をしたら喜んでもらえるか。そして、準備をし本番を運営して片付ける。課題を見つけ、考え、実行する総合的な学びである。

1年生は、パーカションを自作する企画をした。ペットボトル容器などにいろいろな物を入れて楽器にするというものだ。私が行ったときには、来場者入れ替えのタイミングであったが、本校の小学部の生徒、来校していた兄弟などで賑わっていた。大盛況だった。

2年生は、ボールすくいとボーリング。部屋を除くと、既に片付けを終え、生徒たちは遅めの昼食中だった。盛況に付き、用意した材料がなくなり終了したということである。生徒の顔には満足感が見て取れた。

3年生の趣向は少し違っていた。奇妙な朗読会というタイトルのその企画は、「耳なし芳一」の話を朗読して聞かせるという至極真面目な企画であった。開始前、あと何分後に始まるとか、入りきれない人は隣の教室で放映を見られるとか、長編に付き2回の休憩が入るとか、そんな案内を大きな声でする生徒の姿は自信に溢れていた。期待できる雰囲気があった。始まると生徒のナレーション、配役ごとのセリフにどんどん引き込まれていく。相当な練習をしたことだろう。そして、長い。ナレーターは、3人が入れ替わった。5分の休憩を挟んで45分、朗読は終わった。最後に、生徒の一人が、「今夜、あなたの眠りの中に芳一が現れるかもしれませよ」と締めくくった。ちょっとした胸騒ぎを覚えた。聞いている人の心に届く言葉だった。

バラエティに富んだ中学部の企画と発表は、多くの来場者を楽しませていた。

11月2日 桐が丘祭①

第50回目の桐が丘祭当日。生徒が考えたテーマは「old & new 今だからできること」である。学んだこと、考えたとこと、今できることを思いっきり表現してほしいものである。

午前中は、小学部のステージ発表を見た。発表を見て講評するのが私の役割である。

1,2年生は、歌とダンスに簡単な英語表現を絡ませていた。時間割に英語はないが、放課後の英語教室には、1,2年生もよく参加している。「My name is ~.」「I like ~.」といった程度であるが、子供たちは生き生きと表現していた。楽器の演奏や斉唱ではみんなと合わせる一方、一人一人が好きな歌を披露する場面もあった。みんなの中の自分でありつつ、自分の好きなことをみんなが応援している、そんな発表で心が温まった。ただ、1,2年生の好きな曲のほとんどは、私には馴染みのない曲だった。少し寂しさを感じるが、50以上の年の差だ、止むを得まい。

3,4年生は、総合的な学習の時間での調べ学習を発表した。キャベツチームとレタスチームに別れ、同じところ違うところを、身体表現を交えて発表した。不思議を発見することの驚き、知ることの面白さ、知ったことを伝えることの感動などを、のびのびと伝えてくれた。学ぶことに対する新鮮な喜びが感じられた。

5,6年生は、移動教室(他校の修学旅行に相当)で経験したことを、放送番組仕立てで発表した。経験したことを発表するだけでなく、経験したことから生じた問いを掘り下げた。益子で陶器の絵付け体験をしたが、そこからは、「伝統的な食器と現代の食器、あなたはどっち派」といった取り上げ方である。5,6年生らしく落ち着いて堂々とした発表だった。

子供たちは、聴衆を前に緊張したことだろう。ある子は「最初は緊張したが、だんだん慣れて元気にできるようになった」と感想を述べてくれた。学んだことを基にした無理のない発表だったのだと思う。

10月24日 学習発表会②

施設併設の校舎の学習発表会は2日間に渡って行われる。今年からそうしたのだそうだ。集中時間のあまり長くない子供たちの様子や、子供たちがお互いに見られるようにするための改善である。

後半は、小学部の5組から。5組も短期在籍のクラス。今は一人だ。そのAくんは「仕事」について調べたことを発表した。テレビニュースのアナウンサーのような設定で、インタビューやアンケートを交えた内容だった。今、自分が生活する病棟の医師や看護師、保育士に仕事のやりがいやつらさをインタビューし、その結果を、病棟生活を体験している自分の視点から語るところが魅力的だった。両親の仕事についても調べ、初めての発見もあったようだ。Aくんは、インタビューの最後に皆さんに「やめたいことはあったか」と聞いた。病棟関係者は一様に「ない」と答えたそうだ。しかし、母さんは「ある」と答えたそうだ。Aくんは、日頃のお母さんの言葉から、仕事には辛い面もあることを想像する。そして、やめたいことがあっても家族のために頑張ってくれているという思いをもった。仕事には「やりがい」があることと、いろいろな現実があるらしいことも学んだようである。

今日の最後は、3組の発表。個性的なメンバーが揃ったクラスだ。道徳の時間に学んだ、「自分の好きなこと、友達の好きなこと」を、クイズ形式で発表した。Bさんが「Cさんが好きなものは○○で、得意なことは△△です。D先生分かりますか?」といった具合である。好きなものには、食べ物だったり遊びだったりが入り、得意なことには、例えば漢字だったり、お掃除だったりが入った。回答すると正解、不正解の発表のあと、本人が出てくくる。そして、好きな「ぬいぐるみ」を持ち上げて見せたり、得意な漢字を書いて見せたりした。好きなもの見せ、得意なことを披露する子供たちは生き生きしていた。自分のことを知り、友達のことを知る。そこから、自分も友達も大切だと思える。道徳の一番大事な点だろう。こうしたクラスの道徳は、ほかの教科と合わせて扱われることが多い。このクラスでは、それぞれの教科や道徳の勉強を大事に取り上げている。教員たちの姿勢が感じられる発表でもあった。

10月24日 学習発表会①

今日、施設併設の校舎で学習発表会が行われた。子供たちが、日頃の学びをどんなふうに表現してくれるか楽しみだ。

1組は、楽器屋さんに買い物に行くという設定の中に、一人一人の好きなことを織り込んでいた。ダンスが好きなAさんは、ピアノの曲に合わせて手足を元気に動かして見せた。太鼓を上手に叩いたBくんは、楽器屋さんから帰るときに大玉を転がしながら移動した。大玉で遊ぶことが好きなようである。ナレーター役は1年生のCさん、先生の話の合間でタイミングよく声を出す。Cさんは、自分の発声が、周囲とのコミュニケーションツールになることを学んできたようだ。一人一人が、好きなことに向かうときの笑顔がいい。ピアノの伴奏も子供たちの動きを後押ししていたる。

2組の子供たちは、手術などのために施設を利用しており、本校にとっては短期在籍の子供たちだ。本校に来て、まだ日が浅い。始まるとすぐ担任の先生の優しい歌声が響いた。山の音楽家の曲に合わせ、一人一人がチャイム、タンバリンなどを鳴らす。先生がハミングをしている間に音を出す設定だ。タイミングよく音を出せる子供もいたが、長めにハミングしてあげても音が出るには至らない子供もいた。そんな子供は先生の歌声に耳を傾けているように見えた。いつもと異なる場の雰囲気を感じ少し緊張するが、そんな中でも担任の声に安心できるといったところだろうか。

10月17日 愛知県の学校と一緒に勉強

午後、保護者会が行われたが、合間を縫って中1の教室に行く。

5人の生徒がモニターを見つめている。そこには、珊瑚礁やダイビングの映像などが映し出されている。生徒が見ているモニターの横に、もう一つモニターがある。横のモニターの方が少し大きい。そこには、二人の生徒が見える。

本校の中1の5人と愛知県の2人で行う遠隔授業が行われた。社会科の地理の勉強でオセアニアの学習である。しばらく、同じ写真を見たあと、話し合う。テーマは、「オーストラリアで珊瑚の自然を大切にしながら観光者を受け入れていくにはどうしたらいいか。」

本校の生徒が、規則を作って守るようにすると発言をした。授業担当のT先生が、画面に映る生徒に意見はないかと問いかける。すると、男子生徒が、ダイバーに研修を受けさせると話す。規則と教育、面白い論点が出てきた。白熱した議論が続く予感。だが残念ながら私の見学はリミット。保護者会に戻ることにした。

肢体不自由の学校で、小学校や中学校等の教科の勉強をする子供は少ない。他者の意見を聞いたり他者を意識して話したりする機会が、なかなか持てないのだ。こうした課題に飛躍的に発展するICTを効果的活用していきたいものだ。