7月1日 即興を生かす ~高3の自立活動の授業~

職場実習を引き受けてくれるT社の担当お二人が、学校見学を希望されたのでお招きした。コロナ感染予防のため来校者を制限している中であり、検温とマスクの着用をお願いした。

高3のA君の自立活動の授業を見てもらう。二人のお客様を連れて入ると、授業で行うプレイに協力してほしいと言われた。面食らったが、止むを得まい。
まず、「イッツ、チューズディ!」ウォーミングアップだという。O先生の手本。「今日は火曜日だ、給料日で嬉しい!」このように、「今日は〇〇だ」の後に、一言続けるのだという。A君、ちょっと考えて、「今日は土曜日だ、学校が休みだ!」周囲は、ウンウン、なるほどなといった受け止め。次に校長だと言うので、「今日は火曜日だ、(残念そうに)あと3日も学校があるぞ!」隣のB社の部長さん、「今日は火曜日だ、(嬉しそうに)あと3日で休みだ!」進路担当のN先生、「今日は水曜日だ、(生き生きした表情で)スーパーの特売がある!」これには一同からドッと笑いが起こった。

いくつかのプレイを続け、最後は「マジックボックス」というお題。箱の蓋を開け、箱の中のものに応じて演じる、という。O先生のお手本。箱を開け、何かを片手でもって食べるしぐさ。手の様子から丸いものを持っている印象。箱に入っていたりんごを食べたのだそうだ。A君、少し間があった。するとO先生から「正解はないよ」とアドバイスが飛ぶ。意を決して、蓋を開け、両手で何かを持って食べるしぐさをしながら顔を横に動かす。とうもろこしを食べているんだろうなと察しが付く。周囲は、りんごの後だったので、そうきたかという受け止めである。T社の部長さんの箱から出てきたのはうなぎ、うなぎが掴みきれない様子が面白く、思わず吹き出さした。最後のN先生は、小さな蓋を開け、(びっくりした表情をしながら)取り出した小さなものを左手の薬指にはめるしぐさをした。O先生がA君に、N先生が何を演じたかを聞いた。A君は指輪をはめたと言った。だが、婚約指輪だったことまでは気がつかなかった。

自立活動は、生徒一人一人の学習や生活面で困っていることを取り上げる学習である。当校の場合は、体の不自由さによる移動、姿勢保持などを取り上げることが多い。一方で、最近は、対人関係やコミュニケーションがスムーズにできない生徒が少なくない。生徒だけではなく、大人にも多い。こうして、場面を思い浮かべながら、思い切って表現するという経験をしてみると、我ながら、自分ってこんなことができるんだ、という発見があった。


この授業を見たT社のお二人は、学校の考えや特徴が理解できたし、物事にしっかり向き合うA君の様子をみることができた、と言っていた。
私は、自立活動の授業をいろいろ見てきたが、「即興」を生かす活動は初めてだった。いろいろな可能性を感じる授業だった。

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