10月28日 「ね」を書く

施設併設学級の国語の授業を見ようと小学部3組に入る。4年生3人が、筆記具の準備をしていた。

M君と目があった。するとM君。自分を指差し、私の方を見て、しきりに何か訴えてくる。M君は、発語がはっきりしないので、私が首をかしげていると、N先生が助け舟を出してくれた。「M君は、僕は世界デビューがいつできるの?」って言っているんだよね。それを聞いてM君は大きくうなずいた。「世界デビュー?」といぶかしがる私。N先生が続けて教えてくれた。「この学級では、校長日記に取り上げられることを世界デビューと言っているんです。H君とK君は校長日記に取り上げられたので世界デビューしたのですが、M君はまだ登場していないので、僕はいつかと聞いているんです」とのこと。

これには、まいった。私自身の配慮の足りなさに心がチクリとするとともに、小欄の小さなファンたちがここにもいたことを思うと嬉しかった。世界デビューか。なるほど。ホームページは世界中誰でも見られるわけだから、校長日記掲載=世界デビュー。デビューに当たるかどうかは疑問だが、海外の人が見る可能性があることは間違いない。

という訳で、今回はM君に登場してもらおう。

M君は、発語こそはっきりしないが、ひらがな50音の読みをマスターし、文字をコミュニケーションにも使い始めた。国語の時間の前半は、ひらがな文字の書き方の練習。50音1字ずつ取り上げてきて、今日は「ね」。

先生が「ね」のお手本を書く。次に、30cm四方が4つに区切られたマスを取り出した。4つのマスには、1~4の番号が振られている。まず、最初は「1からまっすぐだね」「次は、どこから始まる?」とN先生は字形を教えるために、どのマスに筆が向かうのかを意識させる。M君は、開始位置や向かう方向を指を出して示しており、正確だ。

次にプリントが渡る。プリントは、最初に書き順を意識してなぞって書き、だんだん一人で書くようにできている。1か月ほど前に、「き」を書く場面を見た。そのときM君は、「き」の斜め線を幾つか先に書いてしまってから、横線を書いていた。文字の練習というよりは、消化作業になっている印象だった。だが、今日は違った。一線、一文字ずつを確かめるようにていねいに書いていた。

「き」はM君の名前に入っている文字でもある。その意味では、彼にとっては簡単すぎたのだろう。「ね」は真剣に取り組む価値のある文字、そんなところだろうか。発語が伝わりにくい彼は、補助手段としてタブレットで文字を構成し発音させるアプリの活用を練習中だ。その彼にとって、文字習得がとても大事なことだと感じられているのではないか。そう思わせる真剣さだった。

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